未経験からクラウドエンジニア転職に必要な経験まとめ

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夜勤のサーバールームで鳴り続けるアラート。スプレッドシートで手当たり次第に記録しながら、「このまま監視だけで終わるのか」と感じた夜がありました。あの時に舵を切り、既存の監視スキルにクラウド基礎・IaC・自動化を積み増したことで、未経験でもクラウドエンジニアに転じられたのが自分の経験です。この記事では、同じ悩みを抱える運用監視メインのインフラエンジニアが、何をどの順で学び、どんなアウトプットを示せば採用側の「面接に呼びたい」を引き出せるかを、現場目線でまとめます。


監視経験は武器になる

「監視は評価されない」と思い込んでいる人が多いですが、実際の面接ではアラート設計や障害切り分けの話をすると一気に空気が変わります。オンプレでやってきた閾値調整やログ読みの勘所は、CloudWatchやPrometheusでも同じ軸で活きます。面接官が聞きたいのは「どの順番で疑うか」「どこから計測するか」という判断プロセスです。ここをクラウド用語に翻訳して語れるだけで、ただのオペレーター扱いから抜けられます。


まず整える基礎(短期で効くリスキリング)

  • Linuxを再点検する: journalctl でのログ追跡、systemctl でのデーモン管理、SELinuxやファイアウォールの有効・無効を即答できる状態に戻す。
  • TCP/IPの感覚を取り戻す: サブネットマスク、DNSのラウンドロビンとALBのヘルスチェックの違いを口頭で説明できるか確認。
  • AWSの土台を触る: VPC・EC2・RDS・S3・IAMを無料枠で2周し、各設定の意図をREADMEにメモ。初回はGUI、2周目はCLIで手を動かすと吸収が早い。 この3点を押さえると、セキュリティグループの穴あけやルーティング設計で迷いづらくなり、後続のIaC学習が滑らかになります。

現場で評価されるスキルセット

IaCと自動化

TerraformやCDKで環境を一気に組み上げるスキルは、未経験でも「伸びしろ枠」で刺さります。私の場合、VPC→ALB→EC2→RDSをモジュール化し、GitHub Actionsで terraform plan の結果をPull Requestに自動コメントさせたところ、レビューが一気に楽になりました。手順がコードで残るので、面接で「再現性がある」と伝えやすいのもメリットです。

監視・運用設計

鳴りっぱなしのアラートを半減させた経験は強い武器になります。CloudWatchアラームの閾値をSLO基準で再設計し、ALBのターゲットヘルスチェックとAuto Scalingのヘルスチェックタイプを使い分けるだけで誤報が激減したことがあります。障害時のRunbookをREADMEに添えておくと、運用設計の筋力を示せます。

セキュリティと権限管理

「鍵をハードコードしない」「権限はロールで渡す」を口癖に。EC2からS3へはIAMロールで付与し、DBパスワードはSecrets Managerに逃がすデモを用意しておくと、選考でのセキュリティ深掘りを安心して迎え撃てます。現場ではこの基本が守れないと即NGになるので、最優先で身につけたい部分です。


ポートフォリオは「再現できるか」で作る

  • 個人クラウド環境: VPC内に静的サイト(S3+CloudFront)、API(Lambda or EC2)、DB(RDS)をTerraformで構築。READMEに構成図、手順、想定コスト、削除手順まで書く。無料枠で回せる範囲に抑える。
  • 障害対応の書き起こし: ALBのヘルスチェックをあえて誤設定してダウンさせ、原因切り分け→復旧→再発防止策をポストモーテム形式で記録。MTTRをどう縮めたか数字を添える。
  • コスト最適化メモ: S3ライフサイクル、リザーブドインスタンス、スポットの組み合わせでどれだけ下がるか簡単に試算し、表で示す。 派手さより再現性が大事。GitHub上で他人が手順通りに同じ環境を作れれば、経験年数より説得力が増します。

90日ロードマップ(週10時間想定)

  • 0〜30日: Linux復習とAWS無料枠の基本サービスを2周。Terraformで単一VPCをコード化し、作成と削除を往復。
  • 31〜60日: ALB+Auto Scaling+RDSをTerraformで組み、GitHub Actionsでplan/applyを自動化。CloudWatchメトリクスとアラームを貼り、RunbookをREADMEに追記。
  • 61〜90日: コスト最適化と障害対応演習を実施。ポストモーテム記事と構成図をブログ/リポジトリに公開し、模擬面接で口頭説明を練習。 この順番だと「基礎→実装→説明」のサイクルが回りやすく、面接時に具体例をそのまま語れます。

資格は入り口として使う

AWS Certified Cloud Practitioner(CLF)や Solutions Architect Associate(SAA)は、学習過程をポートフォリオに紐づけると価値が跳ね上がります。試験勉強で作ったVPC構成をTerraform化し、合格後にヘルスチェックやコスト最適化を追加してGitHubに残すと、「学びを実装まで落とせる人」と受け取られやすいです。資格はゴールではなく、語れる題材を増やすための材料と捉えてください。


転職活動の進め方(未経験向け実装例つき)

  • 職務経歴書をクラウド文脈に翻訳: 監視での改善実績(例: 閾値見直しで誤報30%減)を数値で書き、作ったIaCリポジトリやRunbookへのリンクを貼る。
  • 面接の話し方を準備: 「課題→行動→結果→学び」を1案件1分でまとめ、クラウド用語を混ぜて話す練習をする。
  • エージェントを使ってフィードバックを回収: 非公開求人の要件を週次で聞き、足りないスキルを学習計画に組み込む。模擬面接を依頼し、回答の粒度を整える。 自己流で回すよりも、他人のフィードバックを高速で取り込む方が決定的に早いです。

今日から動けるチェックリスト

  1. AWS無料枠を開き、TerraformチュートリアルでVPC+EC2を作って削除する。
  2. GitHubリポジトリを用意し、ALB+Auto Scaling+RDSのIaCをpush。terraform plan の結果をPRに自動コメントするGitHub Actionsを設定。
  3. その環境にCloudWatchアラームと簡易Runbookを足し、READMEに構成図を追加。
  4. 今週中に模擬面接を1回入れ、説明で詰まった箇所を修正。
  5. 転職エージェントに登録し、非公開求人の要件を聞いて次の学習テーマを更新。 行動量を小さく刻んでおくと、夜勤後でも前に進めます。

さいごに

監視の経験はクラウド運用に直結します。クラウド基礎とIaC、自動化のアウトプットを一つ用意し、Runbookやポストモーテムで判断プロセスを可視化できれば、未経験枠でも十分戦えます。次の一手はシンプルです。いまAWS無料枠を開き、最初のTerraformリポジトリを作ってください。その小さなコミットが、転職の突破口になります。