クラウドエンジニアが査定前90日で年収レンジを一段上げる動き方

目次

二社目のSRE時代、評価面談の2週間前に慌てて資料をまとめたものの「成果は見える化されていないね」でグレード据え置きになったことがあります。悔しくて翌期は90日前から数字と証跡を仕込んだところ、同じ仕事量でも年収が80万円上がりました。 この記事では、同じように「社内評価で頭打ち感がある」「転職より先に今の会社で年収を上げたい」クラウドエンジニア向けに、査定直前90日で効いた動きを具体的にまとめます。


なぜ「90日」なのか

評価シートに書ける成果は、締め日前の1〜2週間で作れるものではありません。クラウド環境の改善は計測→実装→安定化のリードタイムが長いからです。90日あれば、数値改善とその再現性を示すドキュメントまでセットで揃えられます。


90日ロードマップ(実際に回した手順)

Day 90-60: 評価軸の仮説づくりとネタ選定

  • 評価基準を読み直し、**「コスト」「可用性」「開発速度」**のどれで点を取りやすいか決める。
  • チームの痛みを3つ洗い出し、改善幅が数字で出やすいものに絞る。例: NAT Gatewayの台数削減、アラート誤報率の低減、デプロイリードタイムの短縮。
  • 週次の1on1で「90日でここを改善します」と宣言し、期待値を合わせておく。

Day 60-30: 計測と小さなリリースを刻む

  • 改善前のベースライン計測を必ず残す(CloudWatchメトリクスやDatadogのスクリーンショット)。
  • 段階的にリリースし、週1でダッシュボードと変更点を共有。リモートでも見える形にする。
  • 失敗もログに残す。後で「リスクを管理しながら進めた」証拠になる。

Day 30-0: 証跡パッケージを仕上げる

  • Before/Afterのグラフとコスト差分を1枚にまとめる。**「月△万円削減」「p99レスポンス▲ms」「デプロイ時間1/2」**のように数字を太字で入れる。
  • Pull Requestのリンク、Terraform差分、Runbook更新のコミットを一覧化。再現性を示すのが昇給の決め手。
  • 評価面談用に5分ピッチを用意。課題→施策→数字→学び→次期計画の順で話す練習をしておく。

成果を「お金」に翻訳する3つの指標

クラウド/SREの仕事は目に見えにくいので、給与テーブルに響く数字に翻訳します。

  1. コスト最適化: NAT Gateway/ALB/ログ保存期間の見直しで月額△万円削減。Savings PlansやS3ライフサイクルは早めに試算して提示する。
  2. 信頼性: SLO達成率、アラート誤報率、MTTRを数字で見せる。**「誤報40%減=夜間呼び出し△回削減」**と人の負荷に紐づけると刺さる。
  3. デリバリー速度: deploy freq / lead time / change fail rate をDevOpsメトリクスで示す。小さな改善でもグラフ化すると評価者が理解しやすい。

週次ダイジェストの書き方(テンプレ)

評価者は忙しいので、週1の短いメモで進捗を可視化すると面談前の説明が楽になります。

Week 6 ダイジェスト
- 目的: ALBアクセスログのS3保存期間を90日→30日に変更し、月▲18,000円見込み
- 実施: Terraform module更新、GitHub Actionsでplan差分を共有 → 本番適用
- 計測: CloudWatchメトリクスで4日間監視、4XX/5XXに変化なし
- 次週: コスト実績の反映確認、同様の設定をstg/prodへ展開

Slackに貼るだけでも「アウトプットが継続している人」と認識され、査定シーズンの説得がスムーズになります。


リモート勤務でも存在感を出すコツ

  • デモ動画を録る: 3分の画面録画でBefore/Afterを見せると、会議を増やさずに伝わる。
  • アラートを自動ポスト: 成果が出たらSlackに自動投稿するWebhookを仕込むと、チームの目に触れやすい。
  • 社内ドキュメントの更新履歴を残す: Runbookや手順書の更新日時を明記し、リンクを週次メモに貼る。

評価面談での話し方(5分ピッチの骨子)

  1. 課題の数字: 「月額ネットワークコストが120万円、アラート誤報が週12件」
  2. 取った打ち手: Terraformモジュール化、ALB/NATのAZ配置見直し、CloudWatchのしきい値調整などを箇条書き。
  3. 結果: 「月△18万円削減」「誤報40%減」「デプロイ時間半減」。グラフを1枚用意。
  4. 学びと再現性: 何を標準化し、別プロダクトにも適用できるか。
  5. 次期計画: 「来期はSLOとFinOpsダッシュボードを結合し、全サービスでタグ遵守率95%を目指す」

この順番で話すと、評価者が給与テーブルを上げるための材料が揃います。


よくある失敗と回避策

  • 長期PJに張り付き成果が見えない → 90日で完結する改善を1本は入れる。
  • 改善幅が数値化されていない → 必ずベースラインを取ってから変更する。スクショやメトリクスURLを残す。
  • 誰も知らないまま進めた → 週次ダイジェストを送り、ミニデモを月1で実施。
  • コスト削減ばかりで信頼性が落ちた → 変更後のSLO達成率も併記して安全を示す。

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査定は運ではなく準備で決まります。90日あれば、数字・証跡・再現性の3点セットを揃えられます。今日の業務ログを振り返り、まずは「何を数字で残すか」を決めてみてください。それが次の昇給の起点になります。