クラウドエンジニア転職の面接対策 実戦ガイド
目次
夜勤明けにコンビニの明かりをぼんやり眺めながら、「このままオンプレの監視だけでキャリアが終わるのか」と焦った夜がありました。そこからクラウドに舵を切り、面接で何を突っ込まれ、何を示せば納得してもらえるのかを体で覚えました。この記事は同じ場所に立つあなたに向けて、面接で評価される具体的な準備と受け答えを、手順付きで整理します。読み終えたらすぐ動けるように道筋を置いておきます。
クラウドエンジニア転職が今チャンスな背景
クラウド移行案件は引き続き積み上がり、SREやプラットフォームエンジニアリングの席が増えています。オンプレ経験がある人は、設計・運用の原理を知っているぶん吸収が早い。可用性・セキュリティ・コストをバランスさせる目線を持ち込める人材はまだ足りません。転職市場では「クラウド未経験でも意思決定の筋道を語れる人」が歓迎されるタイミングです。
面接で見られる評価軸とスタイルの違い
評価軸はシンプルに4つ
- 技術深度: VPC分割の設計意図、ALB/NGWの置き方、RDSの冗長化方針などを理由付きで説明できるか。
- 設計思考: 要件をSLOに落とし、トレードオフを言語化できるか。コストと可用性の天秤をどうかけるかを聞かれることが多い。
- 運用・セキュリティマインド: IAMロールの最小権限、ログ設計、バックアップ/リストア手順を実装レベルで話せるか。
- コミュニケーション: 失敗事例を率直に共有し、改善のプロセスを伝えられるか。
企業タイプで質問が変わる
- SaaS/自社プロダクト: 「リリース頻度と可用性の両立」「オンコール体制での判断」を深掘りされる。デプロイ自動化とエラー予兆検知の話が刺さりやすい。
- SIer/受託: ガバナンスとセキュリティ設計を重視。マルチアカウント構成、Terraformのコードレビュー体制を聞かれがち。
- スタートアップ: 少人数で回す前提なので、一人で設計→構築→運用まで走った経験や意思決定の速度を見られる。
頻出質問と受け答えの作り方
技術・設計系
- 「99.9%の可用性でシンプルに組むなら?」と問われたら、冗長化の前提を確認するところから始める。例: ALB+2AZのEC2+RDS Multi-AZを最小構成にし、ヘルスチェックとAuto Scalingのしきい値を口頭で示す。コストとの折り合いを一緒に語ると納得されやすい。
- IaCではTerraformのモジュール化とGitHub Actionsでの
plan自動コメントをセットで話すと、再現性への配慮が伝わる。
セキュリティ・ガバナンス系
- よく聞かれるのは「IAMをどう整理するか」。役割ベースで権限を分け、EC2はロール経由でS3にアクセス、Secrets Managerで機密を管理と短く答え、CloudTrailやConfigでの検知体制に触れると深みが出る。
- ネットワーク分離は、パブリック/プライベートサブネットの理由と、踏み台・Session Managerの選択を語れると安心感を与えられる。
障害対応・ポストモーテム系
- ALBのターゲットグループを誤設定して全落ちさせた経験を話したことがあります。検知→一時対応→恒久対策→再発防止の順で、MTTRがどれだけ縮んだか数字を添えると、冷静に振り返れる人だと評価されます。
- ポストモーテムでは「何を計測し、誰に共有し、どこで仕組みに戻したか」を具体的に述べる。Runbookやダッシュボードの更新まで触れると強い。
ビジネス・コミュニケーション系
- 「なぜクラウドへ転向?」には、成長機会・リリース速度・可観測性の高さといった価値を、自分の経験と紐づけて答える。オンプレで苦労した例を対比に使うと説得力が増す。
- ステークホルダー調整は「インシデント復旧より先に顧客報告を優先したケース」など、現場で迷った場面を持ち出すと人柄が伝わる。
ポートフォリオと実績の作り方
- 公開IaCリポジトリ: VPC→ALB→EC2→RDSの最小構成をTerraformで用意し、READMEに構成図・想定コスト・削除手順を記載。
terraform applyを走らせるGitHub Actionsを手動トリガーにしておくと安全。 - Runbookとポストモーテム: 意図的に障害を起こし、切り分け→暫定対応→恒久策までを書き出す。CloudWatchメトリクスやログクエリを貼ると、実務に近い質感になる。
- コスト最適化メモ: ストレージのライフサイクル、リザーブド/スポットの適用条件を試算し、改善幅を表にまとめる。面接で「数字で語れる人」と印象づけやすい。
面接当日の立ち回り
- 冒頭15秒で「役割・強み・直近成果」を短くまとめる。例: 「オンプレ運用5年、最近はTerraformでALB+ASG環境を自動構築。誤報アラートを30%減らした経験が強みです」。
- ホワイトボードやメモアプリでは、レイヤー→データフロー→耐障害性→セキュリティの順で描くと整理しやすい。
- 質問タイムでは「SLOの決め方」「オンコールの頻度」「技術負債の返し方」を聞くと、入社後のギャップを減らせるし、関心の軸も伝わる。
- オンライン面接はマイクと回線を事前にチェック。図解を共有する場合は静止画を用意しておくと、画面共有の不調にも備えられる。
よくある落とし穴
- オンプレ経験を過小評価し、責任分界を語れないケースが多い。クラウドではOSより上の責任を自分たちが持つ場面が増えることを整理しておく。
- ベンダーロックインを恐れてサービス採用を濁すと、「意思決定が遅い」と見なされがち。採用理由とリスクヘッジ(例: IaCで抽象化、標準プロトコル採用)をセットで話すと良い。
- 資格を盾にするだけで実装が伴わないとすぐ見抜かれる。資格で得た知識をどの環境に反映したかまで用意しておく。
直前1週間で仕上げるチェックリスト
- Day7-5: 受ける企業の求人票を読み、必須技術を自分の事例に紐づけて言語化。足りない部分は小さな検証で穴埋め。
- Day4-3: 技術面接の模擬を1回。録音して、専門用語の使いすぎや説明の順番を整える。
- Day2-1: 自己紹介とSTAR形式のエピソードを音読で確認。オンライン面接の機材・周辺環境を再チェック。
転職エージェントを味方にする
自力で求人を探すより、クラウド案件を多く扱うエージェントに登録し、週次でフィードバックをもらうほうが修正サイクルが早い。非公開求人は要件が具体的で、面接の深掘りポイントも聞ける。初回面談までに以下を渡しておくと、紹介の精度が上がります。
- TerraformリポジトリとREADME
- ポストモーテムやRunbookのリンク
- 希望するオンコール頻度、成長したい領域(例: セキュリティ、コスト最適化) エージェントを「書類添削と模擬面接の外部レビュー役」として使うと、面接ごとに改善が積み上がります。
まとめと次の一手
クラウド面接は、派手な実績よりも再現性のある設計思考と運用の筋道を示せるかで結果が決まります。今日できるアクションは小さいものばかりです。
- AWS無料枠でVPC+ALB+EC2+RDSをTerraform化し、GitHubに公開する。
- 1件の障害シナリオを作ってポストモーテムを書き、Runbookを添える。
- 模擬面接を1回予約し、詰まった箇所を翌日直す。
- クラウド特化の転職エージェントに登録し、非公開求人の要件を聞く。 この4つを回すだけで、面接の回答は一気に具体的になります。次の勤務が終わったら、まずはリポジトリを立ち上げてみてください。小さな一歩が、キャリアの転換点になります。